ここ数年、北海道や東北地方を中心に、クマが頻繁に出没するようになった。
スーパーマーケットや自宅の庭など、これまでは考えられなかった場所にも出没するようになり、襲撃されて死傷者が出たという事件もニュースで取り上げられるようになった。
「クマへの恐怖」が、生活に深刻な影響を与えるようになった。
このような中で、これからのレジャーシーズンに向けてぜひ活用したいのが、「クママップ」だ。
これは、クマの出没情報をまとめて地図上で確認できるようにしたウェブサイトやアプリである。
しかし、このクママップを実際に検索してみると、似たようなものがいくつかヒットするため、結局どれを見ればよいのかよく分からないと感じた。
そこで今回は、現在公開されてる主要なクママップを調べてみることにした。
この記事が、皆さんがクママップを利用する際の参考になれば幸いだ。

①クママップ(Danyel Koca氏)

「クママップ」や「クマ 出没 マップ」でまずヒットするのが、クママップ(https://kumamap.com/jp)というサイトである。
こちらのクママップはAndroidやiOSのアプリとしてもリリースされており、これらもサイト内からダウンロードへ進むことができる。
私がこのサイトを使ってみて思ったことは次のとおり。
めちゃくちゃ見やすい
とにかく、このサイトはめちゃくちゃ見やすい。
フォントやカラー、レイアウトのごちゃつきがなく、UIが洗練されている。
ストレスなく情報を収集できるというのは、ウェブサイトにとってとても大切な要素だ。

また、このサイトでは「クマを報告する」から気軽に出没情報を投稿できるようになっているのだが、この機能も非常に直感的で使いやすいと感じた。
これなら、「クマを見かけたから報告しよう!」というユーザーの気持ちが損なわれないうちに、報告完了まで進められそうだ。
報告が多くなればなるほどデータベースは充実し、ユーザーはより精度の高い情報を受け取ることができるようになる。

また、地域別の出没情報のページでは、「過去○日間に○件出没」といった表示や、出没数の推移のグラフなど、状況を簡単に把握できるような工夫がちりばめられていた。
情報源が充実している
こちらのサイトでは、都道府県の行政データ、全国ニュース、検証済みコミュニティ投稿からクマ出没情報を収集して集約しているとのこと。
都道府県からの情報の取得には、1日2回自動で実行されるPythonプログラムを利用しており、収集した情報は英語翻訳や出没地点のマッピング(逆ジオコーディング)を行って、ユーザーが利用できる状態に整理しているようだ。
おそらく全国ニュースについても、自動で収集するプログラムを利用していると思われる。
検証済みコミュニティ投稿とは、サイトやアプリから投稿された出没情報だろう。
投稿されたデータは検証を行った上でデータベースに追加されているため、スパムのような投稿でデータが荒れるといったこともなさそうだ。
訪日外国人ユーザーを想定している
このサイトは、海外からでも利用できるように英語や中国語、韓国語などでも読むことができるようになっている。
また、訪日外国人に人気なスポットの特集や、旅行計画を立てるための機能など、日本への渡航を検討している海外ユーザーを意識していると思われるポイントが見られた。
日本への夢を膨らませてくれている方々をクマ被害から守るためにも、こういった訪日外国人への適切な情報提供も重要なのだと感じた。
「都道府県が公開しているクマ出没情報はフォーマットがバラバラだし、そもそも日本語でしか書かれていない。これでは、訪日外国人にはクマの出没情報が全く伝わらない。」
開発者のサイト(後述)を訪ねてみると、こういった問題意識もサイトを開発する動機の一つとなったと読み取ることができた。
開発者について
開発者について調べてみると、Danyel Koca(ダニエル・コジャ)氏という人物であることが分かった。
ダニエル氏はスロベニア留学や京都大学工学部の卒業の後、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京オフィスなどを経て、2025年以降は日本のAIスタートアップの星であるSakanaAIで勤務しているようだ。めちゃくちゃ優秀な人物だ。
ダニエル氏のオフィシャルサイトで公開しているブログも面白い記事が多いので、ぜひ読んでみてほしい。
②くまMap(Seiu氏)
AndroidやiOSのアプリとして上位表示されるのが、「くまMap」である。
こちらはSeiu氏によって個人開発され、2025年11月にリリースされたものである。
現在も活発にアップデートされているようだ。
私もAndroid版をダウンロードして、実際に使ってみた。


ユーザー登録で自分特化にできる
こちらのアプリの特徴は、ユーザー登録からはじまることだ。
ユーザー登録に必要なものは、ユーザー名とアカウント画像(デフォルトアイコンでも可)のみ。
ユーザー登録によって、「マイエリア」を登録して周囲の出没情報を受け取ったり、つぶやき機能で他のユーザーとコミュニケーションをとることができるようになっている。
このように、自分用にカスタマイズできるアプリは非常に強力だと思う。より自分に必要な情報を汲み取りやすくなり、どんどん生活に馴染んでくるだろう。
とりわけ、クマが頻繁に出没するような地域の方にはとても心強いアプリなのではないだろうか。
Twitter(現X)に近いUI
なんとなく、ホーム画面のタブやプロフィール画面、タイムラインのUIが、Twitterをほうふつとさせる。今のXというよりは昔のTwitterに近い。
何となく温かみがあって親近感を感じる。
緑を基調とした色味で全体的に落ち着いていることもあり、使っていて疲れづらいという印象を受けた。



開発者について
開発者のSeiu氏について調べてみると、個人でスマホアプリを開発している方のようだ。
このくまMapを開発した際には、Encount(https://encount.press)というニュースメディアサイトで取り上げられた経過もある。(当時の記事はこちら)
また、アプリストアでは、くまMap以外にもSeiu氏が開発したアプリが公開されているので、気になった方はのぞいてみると良いだろう。
なお、Androidアプリを公開しているGooglePlayでは、evo5rsという名前で公開されている。
③FASTBEAR(株式会社Aisometry)
FASTBEAR(https://fastbear.aisometry.com)は、東京大学・会津大学発スタートアップの株式会社Aisometry(https://aisometry.com)が開発し、2025年12月にリリースしたクマ出没マップである。
こちらのプロジェクトは、経済産業省が主催する「未踏的な地方の若手人材発掘育成支援事業」の取り組みの一環として開発されたとのこと。
リリース時のPRTIMESの記事を確認しながら、本サイトについて触れていきたい。
強力な速報性
こちらのサイトが強力な理由として、次の2点が挙げられる。
- 独自のAIエージェントによる自治体発表やニュースの収集と反映
- クマ検出AIカメラ「SENTINEL」の収集データの反映
1点目について、FASTBEARでは、各自治体が公表した情報やニュースで報道された内容をAIで自動収集して利用しているようだ。
各自治体が提供する情報は、フォーマットも表現も様々である(PDFやCSV、表記ゆれなど)。
こういった情報をうまく統合するためには、AIによる柔軟な処理が有効なのだろう。
また、自動処理させることによって、大量の情報を即座にさばいて反映させることができる。
2点目について、同社が開発した「SENTINEL」というカメラがクマを捕捉すると、その情報がリアルタイムでFASTBEARに反映されるようだ。
これは他のクママップにはない、特筆すべきポイントだ。
こうした即時性の高い内容を組み込むことで、最も「今の状況」を把握することに特化できている。
それを強調するように、利用画面の右上には「LIVE」と表示されている。

蓄積データと連携したクマ対策
同社では、既に過去10年間にわたるクマ・イノシシ等の詳細な出没データ(数万件規模)を保有しているとのことだ。
こういった過去のデータやFASTBEAR用に蓄積されたデータは、効果的なクマ対策に向けた施策を後押しすることになる。引用記事でも触れられていたが、例えば監視カメラを設置する場所の最適化や、中長期的なクマ対策計画の検討などが可能になる。
同社の事業は、この国の「クマとの共存」を確立していく上でカギとなるのではないだろうか。

その他
調べた結果、上記の3つが全国規模のクママップとしてはメインだと感じたが、その他に見つけられたクママップについても一部紹介したい。
クマの出没が多いエリアでは、複数の自治体と連携して出没情報マップを公開しているケースが散見された。遠出の際には、目的地の自治体の公式サイトなどを調べてみると、より実態に即した出没情報が手に入りそうだ。
クマダス
秋田県が運営するクマ等の出没情報のマップである。
秋田県は他県よりクマ出没情報が非常に多く、しかも県域全体に出没している状況である。
(2026年4月から5月4日までのツキノワグマ出没情報に絞って検索しても、約440件あった。)
こういった状況から、秋田県民の方には手放せない情報源になっているようだ。
なお、クマダスからは出没情報を投稿することもできるようになっている。
ひぐまっぷ
2016年度から運用が始まった、主に北海道内の自治体間で利用されているヒグマ出没情報管理プラットフォーム。開発元はダッピスタジオ合同会社(https://www.dappi.jp)。
このプラットフォームと連携している自治体は、ひぐまっぷを利用し、地域の出没情報をレポートとして公開しているようだ。
ひぐまっぷにアクセスすると行政職員向けのログインがあり、一般の方はマップを見ることができない。
ただ、全道直近3か月分のデータを公開しているURLがあったので、こちらを掲載しておく。
獣(じゅう)マップ
株式会社エフコム(https://www.f-com.co.jp)が福島県内の一部自治体と連携して運用しているクマ等の出没情報マップである。
福島市や会津若松市、磐梯町などをはじめとした自治体が、こちらのシステムで情報提供を行っている。
熊遭遇AIマップ
上智大学の深澤研究室で開発・公開されているクママップ。
AIによってクマ遭遇リスクを割り出し、地図上に落とし込まれている。
オレンジを基調としたグラデーションで、どこがクマ遭遇リスクの高いエリアなのかが直感的に分かるようになっている。
まとめ
今回の調査で様々なクママップに触れて、それぞれの使い勝手や違いを知ることができた。
私見としては、総合的には①クママップが見やすくて使いやすいと感じた。
だが、カスタマイズ性であれば②くまMap、リアルタイム性であれば③FASTBEARが、それぞれメリットが目立つかたちとなった。
思ったよりも、ユーザー居住地や用途によってベストなクママップは変わってきそうだ。
クマ出没問題などの社会問題については、ユーザーなど多数の人々の協力が必要になる。
この時に大切なのがスムーズなコミュニケーションの場なのかなと、今回調べる中で強く感じた。
うまく情報を共有して蓄積することが、質のよい対策につながっていくと思われる。
クマとの上手な共存を目指すため、クママップのような社会ツールが今後も開発されていくことを期待したい。


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