Discogs(https://www.discogs.com)というサイトは、膨大な数のアーティストやレーベル、作品の情報が集まるプラットフォームである。このサイトは、Wikipediaのようなユーザー投稿型の音楽データベースであるほか、CDやレコードなどの商品が世界中で売買できる市場にもなっている。
次の図はGoogleトレンドで「レコードプレーヤー」を検索した結果だ。ローファイ系の音楽やフューチャーファンク、シティポップなどの影響もあり、日本におけるレコードへの関心は近年も高まっていることがうかがえる。世界的にもレコードの価値は再評価されており、保存状態の良いレコードが多い日本は音楽ファンやバイヤーからも注目されている。

こうした事情を踏まえ、今回はDiscogsで日本からレコードを出品しているのはどういった出品者なのかを探ってみることにした。海外向けのオンライン販売は普段目にしない世界であるため、新しい発見がありそうだ。

調査方法
Discogsのマーケットプレイスで、
- 出荷元:Japan(日本)
- フォーマット:Vinyl(レコード)
- 通貨:JPY(日本円)
上記の条件で出品を検索し、日本の出品者の情報を集めてみた。
結果としてヒットしたのは約53万件。これを全て確認するのはさすがに厳しいので、後述の調査1と調査2のように、一部の商品データから出品者を確認することにした。そして、確認した情報によって出品者のリストを作り、それを即席の自作検索ツールでDiscogsのAPIを叩いて出品者情報を取得した。なお、自作検索ツールはAIコードエディタの「Cursor」に作ってもらった。
調査を行ったのは、2026年5月21日(木)の14時頃である。
調査1― 商品登録のタイミングから調べる
「リスト済み 最新」で検索結果を並べ替え、上位5,000件の出品情報から出品者を確認した。
なお、上位5,000件目であってもリストに載ってから1~2日程度しか経っていないと見られた。出品のペースが凄まじい。ほぼ毎日数百件レベルで出品している出品者もいるのかもしれない。
今回の調査でヒットしたのは、あくまで2026年の5月20日頃から21日頃にかけてレコードを出品した出品者、ということになる。つまり、ここで確認できた出品者は、取引が活発な出品者である可能性が高いと言えそうだ。
逆に、たまたま調査のタイミングでレコード出品をしていなかった出品者はピックアップできていないので、ご留意いただきたい。
調査2 ― 商品の状態から調べる
調査1と同様に、「商品の状態(Mint~Poor順)」で検索結果を並べ替え、上位1,000件の出品情報から出品者を確認した。
ヒットした商品は、レコードの状態がMint(状態が極めて良い)のみだった。未開封のまま保管されていたようなものや、比較的近年リリースされたレコードが多かった。
この作業で得られたリストは、調査1で得られるものとは似通ってしまうものの、更新日時に左右されないため別の出品者もヒットすると考えた。
調査で得られたリスト
調査で得られた出品者のリストについて、出品数と評価数を添えながらTableauでまとめてみた。
左の表が調査1、右の表が調査2の結果だ。順番はそれぞれ出品中の商品数順にしている。なお、同じ出品者でも出品数などの値が左右で異なっている場合があるが、これは調査タイミングのずれによって生じたものである。
想定どおり、左右の表に共通する出品者は多い。
ここで調査2でヒットした出品者についてざっと見てみると、主な出品はCDという出品者が多かった。そのため、これ以降は調査1でヒットした出品者からピックアップして深掘りしていきたい。

出品者ピックアップ
ここからは、リストから出品者をピックアップして調べてみた内容をまとめる。
MION.Tokyo
リストの中で、出品数が断トツの「MION.Tokyo」。
こちらは、神奈川県横浜市の株式会社MION(https://mion.music)という会社が運営するレコード店「横浜レコード」のアカウントのようだ。
Discogsにおける出品(約165,000件)はほぼ全てVinylのため、レコード専門と言って差し支えなさそうだ。
会社の代表取締役は小坂ランゲ由維氏で、会社の公式サイトによると、
- 1985年…株式会社イザードとして設立。オーディオ機器やリハーサルスタジオ(スタジオ24)の運営などを開始
- 2018年…「MION Records」を設立し、日本とベルリンでレコードの買い付けや店舗販売を開始
- 2020年…株式会社MIONに社名変更。レコードのサブスク事業等を開始
といった変遷を辿っている。そして、今や卸売りネットワークは数十か国を超え、世界規模の流通ネットワークを持抱えている。
2021年には横浜市内に楽器店「三音楽器(Mion Instruments)」をオープンしていることも踏まえると、音楽に関して本当に幅広く影響力を持っている会社だ。
おそらく、この洗練された流通網と在庫管理システムによって、Discogsを含むあらゆるチャネルでレコードの販売ができているのだと思う。
実際、MION.TokyoによるDiscogsでの出品状況を確認すると、最新から1000件目の商品でも24時間以内の出品だった。かなり最適化されているようだ。
なお、Discogsには「MION.Tokyo」のほか、ベルリンを拠点とする店舗の「MION.Berlin」も出品者として存在している。こちらのアカウントでも、約10万件のレコードを取り扱っている。
recordshopshibuya
評価数が断トツで多いのは「recordshopshibuya」だった。出品の多さもMION.Tokyoに次いでいる。
こちらは、アナログレコード・CDの中古専門店「HMV record shop 渋谷」のアカウントだ。運営会社は、株式会社ローソンの子会社である、株式会社ローソンエンタテインメント(https://www.ent.lawson.co.jp)。
Discogsにおける出品(約53,700件)のうち、Vinylは約38,700件で全体の7割となっている。

実店舗がオープンしたのは2014年8月で、渋谷駅から徒歩5分ほど歩いたビルの中にある。1階と2階が店舗フロアとなっており、中古レコードを中心に約8万枚を取り扱っているらしい。渋谷エリアではかなり大規模なレコード店だ。
Discogsでの取り扱いは2017年に開始している。Discogs上の評価数の多さは、それだけ実際の取引数が多いことを示唆している。HMVの知名度と「shibuya」のネームブランドが、海外から注目と取引を集めるのかもしれない。
grindrecords
こちらは大阪府大阪市にあるレコード店「Grind Records」のアカウント。
Discogsにおける出品(約49,400件)のうち、Vinylは約47,700件で全体の9割以上を占めている。

経営者のDJ YUTAKA氏はベースミュージックに造詣が深く、取り扱っているレコードもジャングルやドラムンベース、ダブステップなどのジャンルが多い。
店舗の隣には、系列店のカフェ「G.R CAFE TERRACE」があり、ランチやカフェのほか、DJブースによるイベント等も行われている。ここではよく、ベースミュージック専門のDJイベントが組まれているようだ。
darumaya
こちらは、東京都の池袋にあるレコード店「だるまや」だった。1995年から経営されている老舗で、駅から徒歩10分ほどの位置にある。
Discogsにおける出品(約20,500件)のうち、Vinylは約11,300件で全体の半分ほど。残りの出品は主にCDだった。
こちらは調査1でのみヒットし、調査2ではヒットしなかったアカウントだ。Discogsで出品リストを見てみると、Near-Mint(美品)級の出品が全体の大部分を占めていた。あくまで、中古レコードの買い取りと販売を主軸にしているようだ。
現在、店舗ではクラフトビールも取り揃えて販売している。様々なラベルを見て楽しむことができるクラフトビールは、レコードのジャケ買いやコレクションのような愉しみと通じるところがあるのだろう。ビールは店内で飲むこともできるようなので、ぜひ私も行ってみたいと思った。
mangekyou-records
番外として、どうしても目に留まった出品者がこちらの「mangekyou-records」だ。
2015年に登録されたアカウントで、Discogsにおける出品(約3,300件)のうち、Vinylは約2,000件。
万華鏡レコーズというアカウント名が面白くて色々調べてみたのだが、どういった人物なのかがどうしても分からなかった。一部の動画概要欄にMangekyou Recordsの記載があるアメリカのYouTubeアカウントが見つかったり、カセット少女というJポップやローファイ系の音楽が好きな方のInstagramのアカウントが見つかったが、いずれも違うと思われる。
まとめ
今回はDiscogsで日本のレコード出品者について調べてみた。
大きなアカウントは世界規模で経営している会社が主だったが、老舗のレコード店のアカウントも確認することができた。
なお、今回ピックアップされなかった有名ショップは色々ある。
例えばFTF株式会社(https://ftfinc.co.jp)が運営する渋谷のFaceRecordsだ。FaceRecordsは海外でも知名度のあるレコードショップで、Discogsでも出品を行っている。最新の出品が約1年前ということもあり、今回の検索方法ではヒットしなかったかたちだ。2024年11月から休業していたFaceRecordsの渋谷店が2026年4月に営業再開し、様々なイベントも企画されているので、現在はこうした実店舗経営などに注力しているのかもしれない。
Discogsは非常に大きなプラットフォームで、かなり掘りごたえのあるサイトなので、また潜って調査してみたい。


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